「卵を割る」という動作は日常的なものでありながら、「適度な力で卵を持って、砕けない程度にヒビを入れ、2つに割って中身を出す」という工程はかなり複雑です。工作系YouTubeチャンネルのStuff Made Hereが、卵を割る過程をすべて自動化した「全自動卵割り機」を自作するムービーを公開しました。
Why is this task so difficult for machines? – YouTube

Over-Engineering An Egg Cracking Machine | Hackaday
https://hackaday.com/2025/09/03/over-engineering-an-egg-cracking-machine/
Stuff Made Hereを運営するシェーン・ワイトン氏は、10年間にわたって朝食に卵を食べており、そのたびにイライラしてきたとのこと。ワイトン氏は卵をうまく割ることができず、白身が指に付いてべたついてしまうそうです。
そこでワイトン氏は、「そんなに難しいものではないだろう」という見通しで、全自動卵割り機を自作することにしました。
全自動卵割り機はキッチンで使うことを想定しているため、手持ちできるコンパクトなサイズであり、電子機器やソフトウェア、レーザーなどを使わない純粋に機械的な装置である必要があります。
卵の殻に細かいヒビが入ってしまうときれいに割ることが難しくなり、中身を出した際に殻の破片が混入しやすくなってしまいます。
そこでワイトン氏は、表面にヒビが入ったガラスはきれいにヒビに沿って割れることに着想を得て、「卵の殻に1本の細いヒビを入れて、そのヒビに沿って割る」という方法を考案しました。
卵の両側を持って内側の膜を引き裂くように引っ張ると、うまく割ることができました。
ワイトン氏が考案した方法では、まず卵を両側からグリッパーで固定して保持して、これにナイフで殻を一周するようなヒビを入れます。
そして殻をハンマーでたたいて割り、グリッパーを下方に回転させて両側から引っ張ることで中身を出すという仕組みです。
中身を出したら殻もグリッパーから排出します。さらにこれらの動作を、ハンドルを回すだけで完結させたいとのこと。
最初の課題となったのが、さまざまな形状がありつるっとして滑りやすい卵を、どのようにしてグリッパーで保持するのかという点です。
さまざまな方法を検討した結果、「シリコンで型どりした伸縮性のあるシリコンで卵を保持する」という方法が採用されました。
伸縮性のあるシリコンは卵の形状に合わせて変化するため、ほぼあらゆるサイズの卵を保持できるとのこと。
また、卵が割れた後は内部に設置されたバネ仕掛けの排出装置を使い、卵を排出する構造にしました。
しかし、実際に試してみると意外と卵の内側の膜が強く、伸縮性のあるシリコンだけでは両サイドから引っ張っても割れないことが判明。これはシリコンの伸縮性により、卵に加えられるトルクの大きさが制限されることが問題でした。
そこでワイトン氏は、シリコンの内部にグリッパーを埋め込むことで、卵の形状にうまくフィットしつつ適度なトルクを加えられる構造を考案しました。
こうすることで、きれいに卵を割ることができました。
そしてワイトン氏は3Dプリンターで多くの部品を製作し、卵グリッパーを動かす装置を作成しました。
グリッパーが回転しきったタイミングで、卵の殻を排出するバネ仕掛けが動作する機構も搭載されています。
次は卵の表面にヒビを入れるナイフと、たたいて殻を割るハンマーを作ります。
ナイフはかなり小さめで、内側まで割れない程度にヒビを入れることが可能。
ハンマーはバネ仕掛けで動く小さな金属棒で、ちょうどヒビの上をたたくようになっています。
これらを組み合わせると、全自動卵割り機に必要なハードウェアがすべて備わりました。
しかし、これらのハードウェアが正しく動作するための「プログラム」が存在しないため、実際には動作しません。
そこでワイトン氏は、コンピューターを使わずにすべてを機械式のアルゴリズムで動作させる機構を設計しました。
「卵にナイフを押し当ててヒビを入れる」「圧力を解放してハンマーを当てて割る」「グリッパーで殻を引っ張って卵の中身を排出する」「グリッパーをさらに回転させてバネ仕掛けの排出装置で殻を捨てる」という、文字にすれば単純な動作を実現するだけで、非常に複雑な装置が必要となりました。
ワイトン氏は、「これは非常に複雑であると同時に、非常に単純でもあります。ハンドルを回すだけで卵が割れます。だから美しいんです」と語っています。
さっそく卵をセットして試してみます。
しかし、うまくいきません。個々の部品チェックではうまくいくのに組み合わせると失敗してしまうことを、ワイトン氏は「Integration Hell(統合地獄)」を呼んでいます。
失敗を分析したところ、アルゴリズムのプログラミング用歯車が高負荷で固まってしまうという問題が特定されました。これは設計を微調整することで修復できたとのこと。
また、卵にヒビを入れて割る機構も改善しました。
卵のグリッパーを強化したことで、殻を排出する装置がうまく動作しないという問題も生じました。
そこでワイトン氏は「グリッパーと殻の間に空気を入れることで気密性をなくし、殻が外れるようにする」という仕組みを考案。
改善した全自動卵割り機をテストしてみます。
ハンドルをくるくる回すワイトン氏。
卵がうまく割れました。
ワイトン氏もこの笑顔。
ワイトン氏はこのテスト結果を受けて、機構を洗練させると共に殻の排出装置を内部に埋め込むため、部品の90%を設計し直しました。
完成した全自動卵割り機がこれ。
卵をセットします。
ハンドルを回すと、部品が連動して動きます。
しかし、なぜか割るのに失敗してしまいました。
今回は卵のグリッパーに問題があったとのこと。また、空気を利用して卵の殻を排出する機構は、一方の空気圧だけが抜けて殻が落ち、もう一方の殻が落ちなくなってしまうという問題がありました。
ワイトン氏は卵グリッパーの問題を修復し、殻の排出装置についてはバルブを設置することで対処しました。
再び全自動卵割り機に卵をセット。
ハンドルを回します。
卵の表面にヒビが入っていきます。
見事に卵を割ることができました。
卵の殻を排出する機構もうまく動作しました。
ワイトン氏は満足げな表情。
満を持して、ワイトン氏の妻に全自動卵割り機を試してもらうことに。
妻に全自動卵割り機の力を体感させるワイトン氏。
しかし、妻の表情はイマイチ。
ワイトン氏が10点満点中何点か尋ねると「3点」というかなりの低評価が付けられました。
説明を求めたワイトン氏に対し、妻は「大きすぎるし、複雑すぎるし、見た目が悪い」とバッサリ。
それでもワイトン氏は「いや、素晴らしいと思うよ、美しいし。クールだよ」と諦めきれない様子でした。
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