エニグモのAI活用を支える「AIテクノロジーグループ」について紹介します! – エニグモ開発者ブログ

こんにちは、AIテクノロジーグループの辻埜です。普段はデータサイエンティストとして機械学習を用いたシステムの開発運用や、社内のAI活用推進を担当しています。

近年、テクノロジーの発展に伴いAIの重要性が叫ばれる中で、エニグモが運営するソーシャルショッピングサイト『BUYMA』でも積極的にAIの活用が進められています。この記事では、エニグモにおいてAIやデータをメインで扱っている「AIテクノロジーグループ」についてご紹介します。

まずはじめに「AIテクノロジーグループ」の組織における位置付けとグループ内のチーム構成を簡単にご説明した上で、メインのトピックとして各チームの業務内容や技術スタック/ツールついてご紹介していきます。

組織図

AIテクノロジーグループは、社内のエンジニア組織であるサービスエンジニアリング本部(以下、SE本部)に属するグループの1つです。AI・データのスペシャリストが集まっており、それらの専門知識・技術をプラットフォーム・組織に提供し、事業価値・企業価値向上へ貢献する役割を担っています。元々データテクノロジーグループという名称でしたが、2025年4月1日より「AIテクノロジーグループ」へと名称を変更しました。

組織図(2025年8月1日時点)

AIテクノロジーグループが所属するSE本部はAIテクノロジーグループ、アプリケーション開発グループ、インフラグループの3つのグループに分かれており、各グループ内でも担当ごとに更に細かくチームを構成しています。
SE本部の開発体制の詳細について知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

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チーム構成について

AIテクノロジーグループにはデータエンジニア、データサイエンティスト、検索・MLOpsエンジニアなどデータに関わるメンバーが所属しており、以下のような単位でチームを構成しています。

  • データ基盤チーム
  • 機械学習チーム
  • 検索チーム
  • MDDBチーム

システムの構成図と各チームの担当範囲は以下のようになっています。

システム構成と担当範囲

ここからは、それぞれのチームごとの役割と業務内容を順番にご紹介します。

データ基盤チーム

役割

データ基盤チームにはデータエンジニアが所属しています。社内の膨大なデータを整理して「データ基盤」を構築・運用し、データ分析がしやすい環境を提供する役割を担っています。

エニグモでは、データアナリストやデータサイエンティストといった分析を専門とする社員だけでなく、ほとんどの社員が自らSQLを駆使してデータを確認したり分析を行うなど、データドリブンな文化が強く根づいています。データ基盤チームはこの強力なデータ活用文化を支えています。

業務内容

データ基盤チームの主要な業務の1つは、データのETL(Extrat: 抽出、Transform: 変換、Load: 書き出し)処理の管理です。エニグモでは、それらのデータ処理のオーケストレーションにCloud Composerを活用しています。環境から収集APIを通じて送られてくる何万、何億というデータを分析しやすい形式に整形し、データベースに集約します。さらに、それらのデータがその先のデータベースやMAツール、社内分析ツールへと連携されるまでの一連の処理すべてをオーケストレーションしています。

効果的な施策を実施するためにはデータのリアルタイム性も欠かせません。データはわずか1時間で各DBからデータ基盤であるBigQueryへ同期され、リアルタイムに近い分析と意思決定を可能にしています。高速なデータ連携を維持するため、全体の健全性の監視も行っています。具体的には、Cloud Composerが適切に稼働しているか、同期に遅延は起きていないか、格納されたデータに問題はないかなどを常に確認しています。

また、データ処理のオーケストレーションだけでなく、ビジネスチームがデータを最大限に活用するための環境の整備も行っています。社内では分析ツールのひとつに「Looker」が使用されており、データ基盤チームは社内からの要望に応じてLookML(Lookerで使用される独自のモデリング言語)でデータの定義を行っています。これにより、社内の誰もが効率的で一貫性のあるデータ分析ができる環境を提供しています。さらに、Lookerの利用コストが著しく増大するのを防ぐため、LookMLの記述においてクエリの効率化やデータ集計の最適化を行うことで、リソース消費の抑制を図っています。

加えて直近の業務としてはオンプレミス環境に存在する一部のデータ処理基盤のクラウド移行プロジェクトも進められています。Terraformによるインフラ部分のコード化、既存のDAGのバージョンアップ修正、現状の構成のリファクタリング、移行に伴う動作確認など、機能面・非機能面ともに移行後に求めらる水準を達成できるよう、入念にプロジェクトを進めています。

以上のように、エニグモのデータ活用を根底から支えているのがデータ基盤チームです。

役割

機械学習チームにはデータサイエンティストが所属しています。施策の企画や実施、効果検証、機械学習モデルの開発・運用、社内のAI活用推進などを担当しています。

データ基盤チームの取り組みにより、エニグモには総ユーザー1000万人以上の行動データ、計650万点以上の出品データなど、膨大なデータが蓄積されています。それらのデータから機械学習を活用してインサイトを抽出し、アプリの機能や施策など様々な形でユーザーへ価値を届けるのがデータサイエンティストの役割です。

業務内容

BUYMAでは様々なシーンで機械学習が活用されています。たとえばログイン済みのユーザーがBUYMAを開くと、PERSONALIZED RANKINGという項目が表示されます。これは、各ユーザーの履歴をもとに、ユーザーの好みに沿った商品をレコメンドし、専用のランキングとして表示しています。

PERSONALIZED RANKING

また、データサイエンティストが自発的に提案を行い施策を実施するケースもあります。クーポン施策の実施などがその一例です。施策の企画から分析、実施、効果検証まで一貫して担当します。過去の施策を分析したり機械学習モデルを活用しながら、施策内容や配布タイミング、対象者を定め、様々な関係者と連携をとりながらプロジェクトを進めます。施策実施後には効果検証も行い、後の施策に活かすための知見を探ります。

機械学習の知見を活用し、社内で利用されているサービスの内製化に至ったケースもあります。以下のブログでは、元々社内で使用されていた他社製の類似画像検索システムにおいて、精度を維持しつつコスト削減が実現できた事例をご紹介しています。

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直近では社内のAI活用を推進するため、Difyという生成AIアプリ開発ツールを活用した取り組みも行っています。エンジニアが逐一アプリを構築するのではなく、非エンジニアでもツールを使ってどんどんAIを活用できるような環境を整えるための取り組みを行っています。

以上が機械学習チームの業務内容です。

※混同されがちですが社内の別グループにはデータアナリストのチームも存在します。役割の違いとしては、データアナリストは各事業部が実施した施策をアドホックに分析し、ビジネス上の課題を特定したり、成功要因を把握することに焦点を当てます。一方でデータサイエンティストは機械学習の知識を駆使して、将来の予測やモデルの構築を行うことがメインの役割です。役割の違いはありつつも両者は業務範囲が重なる部分も多いため、毎週合同のデータ勉強会を実施したりミーティングを通じて情報交換などをするなど、密に連携をとりながら業務を進めています。

検索チーム

役割

チーム名から検索システムのみを担当としているチームと思われがちですが、業務内容としては社内のMLOps領域も担っており、検索兼MLOpsエンジニアが所属しています。

BUYMAの検索システムの運用改善、機械学習基盤の開発運用を担うチームです。

業務内容

検索チームの業務内容としては主に3つの柱があります。

1つ目がBUYMAの検索システムの運用改善です。BUYMAでは650万点以上もの商品が出品されています。その膨大な商品の中からユーザーが求めている商品を見つけやすくするためには、高精度な検索システムが欠かせません。検索チームでは検索システムが稼働するKubernetes Engine(GKE)環境の更新や中間DBに用いられているMySQLの管理など、検索システムに関わる一連のシステムのすべての管理を担当しています。
また、直近では検索システムの運用だけではなく、よりよい検索結果を提供するための精度改善の取り組みも行われています。

BUYMAでは複数の検索システムが稼働しています。2024年7月に全検索システムのGoogle Cloud Platformへの移設が完了しており、完全にマイクロサービス化された状態となっています。
BUYMAの検索システムの構成については以下の記事も併せてご覧ください。

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2つ目の柱がMLOpsです。検索チームは元々は検索エンジニアリングの専任チームとしてスタートしましたが、徐々に検索システムから推薦システム、機械学習へと領域が広がり、今ではAIサービスの安定稼働を支えるMLOps部分も担当しています。
具体的にはデータサイエンティストが開発したモデルをデプロイするためのクラウド環境の構築などを行います。構築にあたっては求められる水準のレスポンス速度や可用性を担保するための設計、システムが危険に晒されないためのセキュリティの設計など、考慮すべき事項が数多くあります。また、機械学習システムは一度リリースされたら終わりではなく、必要に応じて何度も修正、テスト、デプロイが繰り返されます。それらの開発と運用のサイクルを円滑にするためのCI/CDの構築も行っています。

3つ目の柱がAIシステムの開発やPoCです。以前までは上記の2つの業務が主でしたが、最近はAIを使ったシステムを比較的容易にデプロイできるようなSaaS系のサービスも増えてきたため、それらを活用してAIを使ったシステムの開発やPoCを担当するようにもなっています。
代表的にはAIを用いた社内ドキュメント検索システムの構築やBUYMAのAI検索機能の改善、テキストデータの分析システムの構築などを行っています。

以上のように、インフラからアプリケーションレイヤーにわたる幅広い知識をフルに生かし、機械学習システムの大黒柱のような役割を担っています。

MDDBチーム

役割

MDDBはMerchandise Databaseの略で、BUYMAに掲載されている膨大な数の商品情報を集約・整理し、提供するための基盤を指します。MDDBチームは、このMDDBの開発と改善、そして社内でMDDBをより活用しやすくするためのAPI開発などを行っています。

業務内容

BUYMAではCtoCプラットフォームの特性上、出品されている商品が同じ商品であっても、出品者が異なればそれぞれ異なる商品IDが付与されるため、システム上では別々の商品であると認識されてしまいます。
そこで、MDDBチームでは社内に蓄積された多種多様な情報を整備し、異なる商品IDを持つ同一商品を紐づけることで、より正確で包括的な商品データベースを構築しています。

一口に「情報の整備」と言っても、乗り越えるべき課題は多岐にわたります。例えば、BUYMAの商品情報の入力方法や記載内容は出品者によってさまざまです。そのため、AIを活用して表記ゆれを吸収し、画像情報や製品情報なども活用しながら、真に同じ商品であるかを識別する仕組みを開発しています。

また、構築されたMDDBの情報をLookerと連携させることで、社内の誰もが簡単にデータにアクセスし、分析できる環境を提供しています。これにより、各部門は「BUYMA上ではどの商品が人気か?」「どんな商品が出品数が多いか?少ないか?」といった商品を軸にした分析や、その分析結果を根拠とした施策の意思決定が可能になります。

さらに、各部門にMDDBを活用した分析環境を提供するだけでなく、MDDBチーム側からもデータ分析における積極的な貢献を行っています。具体的には、MDDBのデータを使ってBUYMA上に出品されている商品の変化を分析し、出品や購入を促進するための示唆に富むデータを提供することで、各部門がより効果的な施策を検討できるよう支援しています。

このように、商品という切り口で施策の意思決定の根拠になるようなデータを収集、整備、分析して提供するのがMDDBチームのミッションです。

上記でご説明した業務を行うにあたって、AIテクノロジーグループでは主に以下の技術スタック、ツールが使われています。

用途 技術/サービス/ツール名
開発言語 Python, RubyRuby on Rails), PHP
コード管理 GitLab
CI/CD GitLabCI/CD
インフラ Google Cloud, Docker, Google Kubernetes Engine(GKE)
IaC Terraform
バッチ処理 Cloud Run, Vertex AI Pipelines
分散処理 Dataflow
ログ管理 Datadog, Cloud Logging
ワークフロー管理 Apache Airflow / Cloud Composer, Vertex AI Pipelines, Cloud Workflows
データ変換 dbt
データベース BigQuery, MySQL, Cloud Datastore
データ分析 Looker, Redash
検索エンジン Apache Solr
タスク管理 Jira, Redmine
コミュニケーション Slack, Zoom

技術スタックについては上記のサービス群で固定されているわけではなく、新たに有用なサービスが見つかった場合には積極的に利用しています。使用ツールについてもセキュリティに問題のない範囲で各個人で好きなツールを使っていたり、最新のAIエディタ等も申請が通れば会社の予算で利用できるなど、エンジニアがなるべく開発しやすくなるような環境を整えています。

先にご紹介した通り、AIテクノロジーグループは昨年度までは「データテクノロジーグループ」という名称でした。しかし、社内でのAI活用が進んでいく中で、グループの担当業務としてもAI検索システムの導入などAIの案件が増えていたことに加え、グループの方針として「BUYMAおよび社内業務へのAI組み込みの提案」という方針を打ち立てており、実態にあった名称とするために2025年4月から「AIテクノロジーグループ」という名称に変更されました。

AIテクノロジーグループは、新たなグループ名となってまだスタートを切ったばかりです。BUYMAがユーザーの皆様にとって魅力的で価値のあるプラットフォームであり続けるために、そして「世界を変える、新しい流れを。」というモットーのもと、日々奮闘しています。

まだまだ課題やチャレンジしたいことがたくさんあります。以下の通り採用も行っておりますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。ご応募お待ちしております!

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