こんにちは、SpeeeのリフォームDX事業部で開発部長をしている佐藤です。
前回の記事では、なぜ産業AXがエンジニアにとって魅力的な環境なのか?という話をさせていただきました。
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今回は第二弾として、より具体的な事業部のミッションと、開発組織が目指す姿についてお伝えしたいと思います。
この記事を通じて、未来の仲間となる皆さんと、私たちが描いている設計図や、その実現に向けた技術的な挑戦、そしてそれを支える組織についての考えを共有できれば幸いです。ぜひ、私たちのビジョンと情熱を感じ取っていただけたら嬉しいです。
事業ミッションとプロダクト戦略
私たちの事業の原点は、リフォーム業界に存在する「情報のムラ」「金額のムラ」「品質のムラ」を解消したいという想いです。消費者は何が適正価格かわからず、事業者は旧来の構造の中で疲弊していく。この状況を変えたい一心で、私たちはBtoBtoCのマッチングプラットフォーム「ヌリカエ」からスタートしました。
しかし、それはバリューチェーン全体の変革に向けた序章に過ぎません。私たちのミッションは「DX Democracy」、すなわちデジタル化の恩恵を一部の強者だけでなく、業界を支えるすべての中小企業や職人、そしてエンドユーザーに届けることです。

そのために私たちは、産業における各登場人物を滑らかに繋ぎ合わせ、ソフトウェアと接続させた「有機的なシステム」の構築を目指しています。
この有機的なシステムを実現するため、私たちは「BizDev」「オペレーション」「AI」という三つの力の緊密な連携が不可欠だと考えています。
- BizDev が、市場のプレーヤー同士が「三方よし」となるビジネススキームを創出し、繋ぎ合わせ、
- オペレーション が、人の介在による高度なオペレーションによって、ビジネスプロセスの複雑な結合を実現し、
- AI が、旧来型ソフトウェアでは不可能だった複雑なインターフェースとして、ソフトウェアとビジネスプロセスを結合させます。
この三位一体の連携を前提とし、私たちの戦略の核心は、単一の施策ではなく、持続的な「グロースサイクル」を確立し、回し続けることにあります。
このサイクルは、リフォーム産業が抱える「コミュニケーションコストの増大」という構造的な課題を、テクノロジーの力で解決するために設計されています。目指すべきグロースサイクルは、以下の流れで構成されます。

- 業務生産性の向上: まず、自社のオペレーションをテクノロジー(特にAI)で効率化し、複雑なコミュニケーションコストを圧縮します。
- アセットの蓄積: これにより「利益(投資原資)」と「AI活用技術」という重要なアセットを創出・蓄積します。
- 事業者(for B)支援の強化: 蓄積したアセットを投下し、事業者向けのSaaSプロダクトを強化します。
- データ蓄積: 事業者の業務がデジタル化されることで、これまで分断されていた「顧客データ」や「施工品質データ」がプラットフォームに蓄積されます。
- 消費者(for C)体験の強化: 蓄積されたデータを活用し、エンドユーザー向けのマッチング精度や顧客体験を飛躍的に向上させます。
- サイクルへの回帰と加速: 顧客体験が向上し集客が拡大すると、再び(1)のコミュニケーションコストが増大します。そこで(1)の「業務生産性の向上」をさらに推進することで、サイクル全体が加速していきます。
この「for C(消費者)」と「for B(事業者)」の双方に価値を提供し、それらをデータとAIで繋ぐグロースサイクルを回し続けること。これが、私たちの中心的な戦略です。
戦略を実現するテクノロジービジョン
この戦略と「BizDev・オペレーション・AI」の連携を、私たちは 「産業AX(AI Transformation)」 というコンセプトで進めようとしています。単なるDX(デジタル化)に留まらず、AIを前提に産業構造そのものをリデザインしていきます。そのために、私たちの技術組織は、主に4つの挑戦に取り組んでいる最中です。
1. 接客オペレーションのAI化技術の確立
私たちのカスタマーサクセス(CS)には、日々膨大なユーザーの声と事業者のナレッジが蓄積されています。この「オペレーション」の強みをAIと融合させ、顧客対応や営業支援といった接客オペレーションを高度に自動化・効率化する技術の確立を目指します。これは戦略サイクルの起点であり、専門オペレーターの対話能力を学習したAIエージェントが、複雑なビジネスプロセスを担う世界を目指しています。
2. 事業者(for B)向け業務インフラの構築
事業者向けSaaSを拡張し、集客支援に留まらず、営業、見積もり・積算業務、材工調達、施工管理といった事業者の業務プロセス全体に深く入り込みます。業務全体をカバーする機能を提供することで、事業者が本来の価値である「良い施工」に集中できる環境を整え、業界の「スーパーアプリ」とも呼べる業務インフラとなることを目指します。
3. 消費者(for C)向け体験の強化
エンドユーザー向けの「ヌリカエ」「リフォスム」といったサービスの体験価値を引き続き強化します。後述するデータ基盤と連携し、より透明性の高い情報提供や、個々のニーズに最適化されたマッチング精度を実現することで、消費者が安心してリフォームを行えるプラットフォームとしての信頼を確立します。
4. 施工品質データ基盤の確立
リフォーム業界に散在する、図面、見積書、施工写真といった多様な非構造化データをAI-OCRや画像解析技術を用いて構造化します。特に「施工品質」に関わるデータを蓄積・価値化することで、これまで誰も作れなかった業界の透明性を高めるデータ基盤を構築します。これが事業者と消費者の双方に新たな価値を提供する源泉となります。
これらの挑戦は、決して簡単な道のりではありません。しかし、だからこそ技術者としてやりがいのある環境だと、私は思っています。
ビジョンを支える組織デザイン
良いビジョンがあっても、それを実行する組織がなければ実現は難しいでしょう。
先に述べたような「BizDev・オペレーション・AI」の三位一体の連携と、先に掲げた4つのテクノロジービジョンを推進するため、私たちは組織デザインも、試行錯誤しながら進化させている最中です。
2つのコア機能:「ドメイン別開発」と「プラットフォーム開発」
私たちは、大きく二つの機能を持つ開発組織で構成されています。

- 一つは、 「ドメイン別開発チーム」 です。
テクノロジービジョンにおける「for C向け体験強化」や「for B向け業務インフラ」といったプロダクトドメインに深く向き合い、市場や顧客のニーズに応じた機能開発を高速で実行するチームです。 - もう一つは、 「プラットフォーム開発チーム」 です。
テクノロジービジョンで掲げた「接客オペレーションのAI化技術の確立」や「施工品質データ基盤の確立」といった、事業部全体の競争優位性に直結する戦略課題を解決する横断組織です。
まだ人数が少ないため完全に組織図を分けられていない部分もありますが、将来的には上記のような体制を実現していく予定です。
「三位一体」を加速させる連携構造
この二つの組織が「三位一体」の連携 を推進する上で、私たちは「エンベデッド(埋め込み)」型の連携モデルを採用しています。
「プラットフォーム開発チーム」のメンバーは、単に中央で共通基盤を開発するだけではありません。彼ら自身が「ドメイン別開発チーム」や「オペレーション」チームの中に一時的あるいは兼務で「埋め込まれ」、同じチームのメンバーとして現場の課題解決にコミットします。
例えば、オペレーションチームが持つ「この業務をAI化したい」という具体的なニーズに対し、プラットフォーム開発チームの専門家が現場で並走し、共通基盤の技術(AIエージェント基盤など)を用いて解決にあたります。これにより、「オペレーションとAIの融合」が絵空事ではなく、現場のオペレーションとして実装されるのです。
この部門を超えた密な連携は、単なる仕組みとして導入されたものではなく、Speeeが創業以来培ってきた文化そのものです。
私たちのエンジニアは、常に「Why-What-Howの整合性」にこだわり、技術の導入そのものではなく「事業成果」を希求します。
だからこそ、「プラットフォーム開発チーム」として技術を集約しながらも、メンバーは自ら業務に深く入り込み、本質的な課題解決を追求できるのです。この文化が、「BizDev・オペレーション・AI」という三位一体の連携を真に機能させるエンジンになっていると考えています。
おわりに:未来の仲間へのメッセージ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
私たちが挑んでいるのは、単なるプロダクトをグロースさせることだけではありません。それは、一つの産業の未来を、テクノロジーの力でより良くしていくという、大きなプロジェクトです。
- もしあなたが、複雑で根深い課題を解き明かすことに知的な興奮を覚えるなら。
- もしあなたが、自らの技術で、社会にインパクトを与える仕事をしたいと願うなら。
- そして、もしあなたが、高い倫理観を持つ仲間と共に、未来の当たり前を作っていきたいと考えるなら。
ぜひ一度、私たちと話をしませんか。
テクノロジーによって、リフォームがもっと身近で、透明で、誰もが安心して利用できるサービスになる。職人が誇りを持ち、その技術が正当に評価される持続可能な業界が生まれる。
そんな未来の景色を、私たちはあなたと共に見たいと、心から願っています。
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