はじめに
こんにちは。プロダクトエンジニアリング部でAndroidのネイティブアプリエンジニアをしている久野です。
2025年9月10日から12日にかけて開催された「DroidKaigi 2025」に現地参加してきました。
この記事では、カンファレンスの現地の様子や、特に印象に残ったセッションについてご紹介します。

DroidKaigi 2025 について
DroidKaigiは、Android技術をテーマにしたエンジニア向けのカンファレンスです。
今年もオフラインでの開催となり、多くのAndroid開発者が集まりました。
また、DroidKaigiの大きな魅力の一つは、セッションの動画がYouTubeに公開される点です。しかも、驚くほど早いスピードでアップロードされます。これにより、会場に参加できなかったとしても、後から動画で学習できるのは本当に素晴らしいことだと思います。私も昨年まではオンラインで視聴しており、大変お世話になりました。
もちろん、現地参加には代えがたい価値があります。どのセッションに人が集まっているかを見ることで技術的なトレンドを肌で感じられたり、企業ブースで他社の方々と交流してモチベーションが上がったりと、多くの刺激を受けました。
この記事で紹介するセッションにも、後から見返せるようにYouTubeのリンクを併記しておきます。
特に印象に残ったセッション
ここからは、私が聴講した中で特に印象に残ったセッションをいくつか紹介します。
1. 基礎から学ぶ大画面対応
- 資料
- セッション概要
- Androidアプリにおける大画面対応の基本的な考え方から実践的な実装方法まで解説されていました。実際に「Large screen differentiated」の認定を受けているアプリの開発知見なので、今後のアプリ開発で大画面対応をする際に、ぜひ参考にさせていただきたい内容でした。
- 特に学びになった点・感想
- タブレット対応でヘッダー画像が画面を埋めてしまう問題に対し、画像のサイズを制限し左右にグラデーションを追加するという解決策が印象的でした。大画面に対応しつつ、ユーザー体験を損なわない工夫が非常に実践的だと感じました。
- また、大画面では両手での利用が多くなることを想定し、
Navigation railを導入する点や、LazyVerticalGridとWindowSizeClassを利用して画面サイズに応じてUIを切り替える点も、すぐにでも取り入れたい実践的なテクニックで普段の業務で活かしていきたいと思いました。
2. 共有と分離 Compose Multiplatform 本番導入の設計指針
- 資料
- セッション概要
- Compose Multiplatform (CMP) を本番環境へ導入した際の設計指針に関するセッションでした。会場では3〜4割の人がKMP(Kotlin Multiplatform)開発経験者で、CMP(Compose Multiplatform)を触ったことがある人は1割程度という状況でした。
- 特に学びになった点・感想
- セッションでは、CMPの採用理由やチーム構成など、導入の裏側まで詳しく解説されていました。
- 特に印象的だったのは、現状Androidエンジニア1名で両プラットフォームの機能開発を行っているという点です。AndroidエンジニアだけでiOSアプリ開発までカバーできるのは、マルチプラットフォームならではの大きな強みだと改めて感じました。
- また、91.5%のコードを共通化できた一方で、共通化が難しかった残りの8.5%(デバイス機能や入出力周り)についても詳しく解説されており、とても有益でした。
- 作りたい機能がある場合、まずはKMP対応ライブラリを探すのが重要という点は、すぐに実践できると感じました。KMPライブラリの検索サービス klibs.io や、JetBrains公式のサンプルプロジェクトは今後の開発で大いに参考になりそうだと感じました。
3. テストコードはもう書かない。JetBrains AI Assistantに委ねる非同期処理のテスト自動設計・生成
- 資料
- セッション概要
- JetBrains AI Assistantを活用して、非同期処理を含むAndroidのテストコード作成を自動化する手法についてのセッションでした。業務でテスト作成にAIを使い始めたため、より良いテストコードの書き方を学びたいと思い聴講しました。
- 特に学びになった点・感想
- セッションでは、Androidテストにおける現実的な課題として、非同期処理の複雑さやメンテナンスコストの高さが挙げられていました。
- 特に、非同期処理のテストではスレッドの差し替え、非同期な値の監視、依存のモック化といった定型的な作業が発生しがちです。このような作業こそAIに任せるべき、という考え方にとても共感しました。
- セッションで紹介された、5つの評価軸(正確性、網羅性、再現性、保守性、速度・コスト)で「どこまでAIに任せるか」を判断するというアプローチは、自分の業務に置き換えても非常に参考になりました。
- 単純なCRUD(作成・読み取り・更新・削除)処理のテストでは、正常系や定型パターンはAIに任せられるものの、異常系や境界値のテストは人間の修正およびレビューが不可欠であること。また、WorkManager のような複雑な処理でも、雛形作成はAIに任せられるが、拡張性や保守性を考慮した修正やレビューは人間が行うべき、という切り分けが明確で分かりやすかったです。
- AIにテストの雛形作成を任せることで開発速度を上げつつ、品質担保や拡張性が求められる部分では人間がしっかり修正、レビューする、というAIとの協業スタイルが、今後のテスト開発の鍵になるということを学びました。
4. スマホ新法、何が変わる?公正取引委員会担当者が語る特定ソフトウェア競争促進法
- 資料
- セッション概要
- 2025年12月18日に施行予定の「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(通称スマホ新法)について、公正取引委員会の担当者の方から直接解説を聞けるという、技術カンファレンスとしては珍しいセッションでした。多くの開発者が注目しており、会場は満席でした。
- 特に学びになった点・感想
- OSの標準機能(通信、音声入力など)の利用可能性向上や、アプリ外での商品提供(ウェブサイトでのイベント告知など)の拡大といったトピックは、Android開発者として非常に興味深く、勉強になりました。
- これまでスマホ新法について自分の理解が浅い部分がありましたが、このセッションを通じて、法律が制定された背景や目的(「なぜ」「何を」するのか)を深く知ることができました。
- 普段なかなか詳しく学ぶ機会のないテーマだからこそ、担当者の方から直接お話を聞けたのは非常に有意義な体験でした。
おわりに
2日間にわたって参加したDroidKaigi 2025、非常に多くの学びと刺激を得ることができました。
大画面対応やCompose Multiplatformといった実践的な技術セッションから、AIによるテスト自動化、そしてスマホ新法という新しい領域の動向まで、多岐にわたるテーマに触れることができ、Android開発のモチベーションがとても高まりました。
特に、今年はセッション・企業ブースを問わず、生成AIとKotlin Multiplatform、 Compose Multiplatform に関する話題が非常に多かったのが印象的でした。業界全体の大きなトレンドを肌で感じることができました。
オンラインでの参加も手軽で素晴らしいですが、やはり現地では、こうした会場の雰囲気や他の参加者とのコミュニケーションを通じてとても勉強になることを改めて実感しました。
最後になりますが、LIFULL では一緒に働いていただける仲間を募集しています。今回希望してイベントに参加をしたように、エンジニアが成長できる機会が盛りだくさんの職場です。カジュアル面談もやっていますので、よろしければこちらもご覧ください。
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