
はじめに
皆さんこんにちは。ソフトウェアエンジニアで、開発向け AI 利用ワーキンググループの id:iizukak です。2025 年も後半戦となりましたが、今年もAI エージェントを活用した開発の進化がとどまるところを知りませんね。GROOVE X でも、LOVOT の開発に様々な開発向け AI が用いられています。
最近、GROOVE X のエンジニアを対象に、AI の利用状況に関するアンケートを実施しました。この記事では、その結果を皆さんに共有し、LOVOT の開発にどのように AI が活用されているか紹介したいと思います。LOVOT 自身、AI が搭載されたロボットですが、LOVOT の開発にも AI が活用されているということを知っていただければ幸いです。
回答してくれた方々の属性
今回は、ソフトウェアエンジニアをはじめ、メカ、エレキ、そしてクリエイターまで、様々なエンジニアの方 17 名が回答してくれました。様々な職種のエンジニアが、AI を活用して開発を行っていることが分かります。

利用されている AI
次に、どのようなツールを、どのような頻度で利用しているか聞いてみました。以下がその結果です。

最も利用者が多いのは GitHub Copilot で、17 名中 13 名が利用しています。Copilot は、単なるコード補完にとどまらず、GitHub 上での Pull Request のレビューでも利用されていますし、各エディタにも設定して使えるので、日常使いしている方が多い印象です。
次に多かったのは Claude Code で、9 名です。CLI ベースのツールとして完成度が高く、カスタマイズも柔軟に行えるため、愛用しているエンジニアが多そうです。特に、ゼロから作るプロジェクトを多く担当しているエンジニアに人気があるようで、それも興味深いです。
Claude Code と同じ利用者数がいるのが、Gemini CLI です。Claude Code と比較して後発のツールですが、Gemini 2.5 Pro など高性能なモデルを利用できることもあり、こちらも人気があります。ちなみに私が最も利用しているツールも、Gemini CLI です。Google Cloud 上で管理できるのも、Google Cloud を利用している企業にとっては嬉しいポイントではないでしょうか。
最近は Devin を積極的に利用している方も増えています。Devin と Slack, GitHub を連携させ、要件を伝え Pull Request の作成を行うことまで一気通貫で自動化できることから、多量のコードを書くタイプのエンジニアだけではなく、クリエイターの方などでも利用しやすいようです。さらに、Devin の Deep Wiki を用いて、普段あまり見ないプロジェクトのコードベースなどに素早くキャッチアップするためにも非常に便利ですよね。
Cursor も一定の人気があり、2 名の方が毎日利用しています。Cursor を利用すると、Cursor 内で開発業務を完結させることもできるため、開発に集中することができるように思います。さらに、利用するモデルの選択肢も広いため、複雑で高度な実装を行うエンジニアに人気が高いようです。
どのような開発業務に利用しているか
次に、どのような開発業務に AI を利用しているか聞いてみました。
- コード補完・スニペット生成: 12 名
- AIによる機能実装・バグ修正・リファクタリング: 11 名
- テストコード生成: 9 名
- 実装方針の壁打ち: 10 名
- READMEやAPIドキュメントなどの生成: 10 名
- bigqueryのコマンドが分からないときにGeminiに例を作ってもらっている: 1 名
- PRのレビュー: 1 名
- 各モジュールの仕様書内容の比較など: 1 名
- gitで操作が不安なやつとかコミット分けてもらったりとかしてます: 1 名
- 実験的な機能の実装の試行、 gemini-cliで処理結果のサマリー作成、など: 1 名
- 実験レポート作成: 1 名
コードの補完や実装だけでなく、README や API ドキュメントの生成、さらには BigQuery のクエリ作成支援など、様々な開発業務で AI が活用されているようでした。特に、実装方針の壁打ちに利用している方が多いのは興味深いです。AI を利用して、アイデアを整理したり、新しい視点を得たりすることができるためでしょうか。
どのような効果を感じているか
AIコーディング支援ツールを利用することで、どのような効果を感じているか聞いてみました。
- 開発時間の短縮・生産性の向上: 15 名
- 新しい技術や知識の習得促進: 9 名
- 単純作業・繰り返し作業の削減: 9 名
- コード品質の向上 (バグ削減、可読性向上など): 8 名
- アイデア創出・問題解決の支援: 8 名
- コーディング中の集中力維持: 4 名
- Typoなどの検出: 1 名
やはり、生産性の向上をあげているエンジニアが最も多い結果となりました。しかしながら、それだけではなく、集中力の維持や、Typo の検出など、様々な効果を感じているようです。
AI 導入に関するエピソード
開発プロセスや、エンジニアとしてのスキルにどのような変化があったのか、フリーフォーマットで記入してもらいました。その結果が以下です。
commitにかかる時間が早くなった、課題に取り組む際のイニシャルコスト(コーディングの理解など)が減った
今まで関わってなかったサービスやインフラのコードに対してのレビューや修正を行いやすくなった
手が止まるケースでも無理にでも進むことがある。それが良いことだけかはまだよくわからない。
名前付けとかは実装とは別の概念を拾ってくる必要があるので、文脈外からもたらされる情報がありがたい。
以前はPythonを使ったGUIツールの作成に時間がかかっていたが、AIツールでより早く実装できるようになった。またCIビルドの環境構築でも全く知見の無いレベルからAIツールのおかげで理解を進めることができた。
インターネットで調べるよりGeminiに聞いた方が早い
テストコードを書くのに時間がかかるため、時間が無い時はテストコード無しで進めてしまうことがあったが、テストコードを書く(書いてもらう)ようになった。
このように、AI ツールの導入により開発効率が向上し、より多くのコードベースに関与できるようになったり、新しい技術を学ぶ機会が増えたりしていることがわかりました。また、Gemini に質問したほうが 検索を行うよりも早いという意見もあり、AI ツールが情報収集の手段としても有効でありそうです。
AI に関する困りごと
さて、これまで AI の活用について良い話ばかりしてきましたが、ある程度の困りごともあるようです。
回答を待つ間など時間を効率的に使える動き方に自身が適応したい
生成されたコードが正常に動作しない場合がある。改善してほしさもあるが、逆になぜそれだと上手くいかないのかという勉強にも繋がるときもあるので、自分にとってはバランス難しい
1つの機能に特化している場合、圧倒的に早く有用です。しかし複数の機能を持つWebアプリケーション開発では、ちゃんとハンドリングが必要な点を実感しています。
LLM が作成したコードのレビューと、ほかメンバーからのコードレビューがあり、レビュー時間が大幅に増えてきているためなんとかしたい。
LLM をローカル環境で気軽に試せるようなスペックの実行マシンの配布があると嬉しい。困っているわけではないが、claude code や gemini cli の利用が増える中で、GitHub Copilotをそのままにしておいて良いのか少し気になっている。ただ、コード補完がなくなってしまうのは厳しい気がする。
AI の導入によって、AI が生成したコードの品質やレビューに関する課題が多く生じていることがわかります。また、AI に仕事を依頼している間の時間の使い方について考えている方も多くいらっしゃいました。GROOVE X では、これらの課題に対して、スプリントレトロスペクティブで話し合われたりと積極的に改善しようと試みています。
AI とつきあっていくコツ
GROOVE X のエンジニアたちが、AI を積極的に活用していることが分かってきました。最後に、AI と上手く付き合っていくコツを教えてもらいました。
自分が分かっていることでも、答え合わせで聞いてみる。ときどき違う視点での回答や気づきが得られる。
こういう概念を導入したらLOVOTがよくなるのでは、というときに、人間や動物の場合のリファレンスなどをGeminiにまとめてもらうとしきい値とかを決めるのに時間がかからないし、自分で考えたしきい値とレポートで出たものが近ければ考え方に大きな間違いがなさそうという確認にもなる。
しっかりハンドリングは必要
- 1つ前のPRで作った機能も再発明してくる。コードの重複は大変多い
- 長いコンテキストは苦手。小さいことは正義。
- アーキテクチャの設計も一緒にやるといい。ディレクトリ構成やDDDライクな感じもこちらが理解している方が良くて、道筋立てる必要がある
AI を活用した開発ならではのティップスが急速に生まれているのが分かります。
まとめ
GROOVE X のエンジニアたちが、積極的に AI を導入・活用していることを、改めて知ることができました。生産性の向上のみならず、新しい技術の習得や、アイデアの創出など、様々な面で AI が役立っているようです。
最後に
GROOVE X では積極的に採用を行っています!
AI を活かした LOVOT の開発に一緒に取り組みたい方、ぜひ以下のリンクから募集職種をご確認ください。
コメント